思ったのと違う!こういうセリフが出た時の事ってハッキリ思い出せます。
良くても悪くてもインパクトが有るので脳裏に焼き付くんですよね。良ければ歓喜、悪けりゃ失望です。では両方だったら?
今回は小波のようにそんな感情がささやかに上下した小さなスポーツカーの思い出です。
クーペ教の信者として洗脳の日々
僕はクルマが好きでよく職場にもクルマで行ってました。当然帰りは仲の良い同僚とご飯でも行こうよと僕のクルマに乗せてあちこち遊びに行ってました。
当時の僕の愛車はトヨタコロナクーペというクルマで、スポーツカーと言うよりはプチハイソカーでしたが、「次はこんなクルマが欲しい」とか「スポーツカーは楽しい」などと話しながら同僚を洗脳する忙しない日々でした。
僕の話術が達者だったのか同僚に素質が有ったのか、まんまとスポーツカーを欲する病に掛かってくれました。もちろん発病すれば症状が出るので、彼は程なくしてスポーツカーを本能の命ずるままに、文字通り何も考えず安くてすぐ買えたって理由で黒の2代目ホンダCR-Xを購入してしまいました。しめしめ。
納車の次の日に会社に乗って見せに来るほどのはしゃぎっぷりは、病状の進行具合の深刻さを感じさせ「将来有望だな」と思わず目を細めたものでした。
CR-Xの印象
当時僕の周りはクルマ好きばかりで色んな車の話をしてたのですが、CR-Xはその小さく低いシルエットと黒が多かったのでゴキブリなどと呼んでたんですが、確かに低く小さなボディにテッカテカの黒はそう呼ぶにマッチしすぎてました。当時でも小さいなと思ったかわいい印象だったのですが、今見たら軽より小さく見えてその小ささが更に際立ちそうですね。
ゴキブリとは言いましたが二代目CR-Xのデザインは特にずば抜けた特徴は無いのですが、FFのファミリーカーの日常的な道具感と、クーペの持つスポーティさが相俟った入門スポーツカーにふさわしい気取りのないデザインで、今のホンダには無い嫌味のなさが光る秀逸なデザインで、スニーカーっぽいカジュアルさを感じさせボーイズレーサーらしいカッコよさですね。
噂通りのホンダ車
さて、仕事も終わり早速CR-Xとご対面です。
開口一番友人は「クラッチが重くて疲れた」とのたまったので、テンロククラスでクラッチが重いだと!と早くも緊張のレベルが増しいやが上にも期待が高まりました。しかし実は彼が教習所以来MT車に乗ってなかったのを僕はこの時知るよしもありませんでした。
そんな事を知らない僕の脳内では、クルマ雑誌で読んだ軽いボディにパンチの効いたZC型エンジンで筑波を驚異のタイムで暴れまわった昔の雑誌記事が脳裏をよぎります。なんと言っても当時FFでこんな速い車はそうはなく、今大人気のAE86なんてCR-Xのインパクトの前では完璧に空気でした。
こいつは油断できない!そう思いながらドアを開けると・・・軽っ!4ドア?と思うほど軽いドアでしたが、まるでレーシングカーだぜと勝手に思い込み乗り込みます。べチーーーン!一斗缶を蹴ったようなこれまた軽い音でドアが締まります。ホンダ車ってやっぱ色々軽いんだなと妙に関心しながらクラッチを踏み込むと・・・軽っ!え?このクラッチってゴム止め?と思うほど軽っ!僕のコロナクーペの半分以下の軽さでしたねぇ。
軽く軽〜く
日頃スポーツカーに乗らない人間の言うことは当てにならない、今更それに気づいたのでもう期待もせずにエンジンを掛け走り出します。
軽っ!走り出してすぐわかる車体の軽さ、そしてそれを感じさせる車内のサラウンドで響くミシミシ音!やっぱホンダはボディが・・・と思いながら850kgという車体の軽さと頼りなさを感じながら軽いクラッチを踏んでどんどんシフトアップ。
この作業がまた軽い!よく軽トラが面白いっていう人いますけど、それに通じるタッチの軽い操作感ですね。
大通りに出たのでアクセルを踏み込んでやるとこれまた軽っ!いやぁボデイの軽さも有るんですがエンジンが回る回る!ターボのようなドンと来る感じが好きな僕でもこれはいい!と興奮!ボディが軽いのでこう色々エンジンの仕事も伝わってきます。
このエンジンの吹け上がりがサスやボディの作りを上回った感じ、バイクですね!クルマはバイクと違って椅子にドッと腰を落とし四輪で支えられたどっしり感があり、エンジンも前方か後方の遠くに有りますが、バイクは跨った直下にエンジンが有り、そのエンジンを囲むフレームに引っ掛かるように乗るので、まるでエンジンを抱え込むような形で加速やコーナリングとなります。要はバイクの乗り味ってエンジンに乗っかってる構造上エンジンそのもの味を相当受けるんですね。
ところがクルマはエンジンとドライバーの間に色んな操作系が干渉してバイクより曖昧になってます。でもCR-Xは違いました。メキメキ唸る頼りないボディにやたら跳ねる社外サスの影響もあってか、エンジンの躍動がダイレクトに感じられました。
850kgという軽さもさることながら、FFはステアと駆動輪が同じなのでそのへんも相まって一層そう感じさせたのかも?
ともかくCR-Xの全ての軽さに合点がいきました。やっぱこれはバイクだ!
ホンダのNAって評判だけのことは有るね。
未だに僕はターボ派でNAはあんま好きでは有りませんが、後にも先にもこりゃ楽しいなぁと思ったNAはCR-Xだけですね。S2000なんかも評判のよいよく回るエンジンですが、乗ってるとその振動と相まって「いつまで回ってんだよ、怖いよ」って感じでした。CR-Xのカジュアルな面白さに比べると真面目すぎで速すぎでしたね。
余談ですがCR-Xを運転してる最中、散々「やっぱホンダのツインカムはスゲーな!」「ホンダのツインカムは楽しいな!」「ホンダのツインカムはよく回るな」「ホンダのツインカムだけは良く出来てるぜ!」とツバを飛ばしながら叫んでたんですが。彼のCR-Xは1.5XってグレードでエンジンはSOHCでした・・・。
車好きを気取ってこれは恥ずいです。あんまバカスカ回るので絶対ツインカムだと思ってましたよ。しかしこの事実、自分のクルマがワンカムと知れば同僚もがっかりし、知ったかの僕の化けの皮も剥がれるWの悲劇なので今でもこの事実は封印しています。
ながなが書きましたがターボ信者の僕としてはD15エンジンで良かったですよ、B16だったら危うくホンダNA教信者になっちゃうところでした。
巷じゃ馬力至上主義が幅を利かせてますが(まぁ僕もですが)このクルマって105馬力なんですよね。でもぶっちゃけこんな運転してておもしろい車もそうなかったです。
100馬力有ればクルマって十分楽しいもんなんだと痛感しましたよ。
今でも思い出してはこれにもう一度乗ってみたくなります、もちろんVTECのSiRじゃなくて1.5 SOHCのCR-X 1.5Xの方ですよ!
kiro0315.hatenablog.com画像出典Wikipedia